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メイキング・オブ『レスキューファイアー』VFX PART1

『レスキューファイアー』の大きな魅力の一つが、フルCGによる爽快無比なビークルの活躍や火炎魔人が引き起こす超火災のスペクタクル感に他ならない。
この路線は前作『レスキューフォース』はもちろん、レスキューシリーズとほぼ同じスタッフで制作された『リュウケンドー』から続いているもので、他のTV特撮作品とは大きく異なる最大の特徴となっている。

これら迫力あるCGやVFXを制作しているのが、日本屈指のデジタル特撮スタジオ──特撮ファンにはお馴染みの制作会社──白組だ。
そこで『レスキューファイアー』でVFXスーパーバイザーを務める、白組の森田淳也さんの解説やインタビューを通して、『レスキューファイアー』のCGやVFXが如何にして作られているのかを、紐解いてゆきたいと思う。

森田さんは、『リュウケンドー』、『レスキューフォース』と3シリーズすべてに関わってきたスタッフの一人である。

特撮シーンのワークフロー(制作プロセス)

白組の『レスキューファイアー』班の作業風景。
上:モデリング作業中の3-DCGのスタッフ。
下:サカエンに発光エフェクトを付けているコンポジター(2Dチーム)スタッフ

『レスキューファイアー』のVFX関係パートは、大きく分けて3-DCGのパートと、2-DのVFX(画面効果)パートからなっており、これに沿って3-Dチームと2-Dチームに別れて作業を行っている。

3Dチームはレスキュービークルや火炎魔人、劇中用3-DCGを作成し、撮影された映像に合わせて動きをつけていく。2Dチームは作成された3-DCGと撮影素材の合成、エフェクト足し(発光、炎・煙足し他)などを担当する。

こうしたワークフローが『レスキューファイアー』での特撮シーンの大まかな作業プロセスだ。

ど派手が基本のバトルシーン

ビークル自体は全体的に金属的なくすんだカラーリングや油汚れを感じさせるウェザリング的な雰囲気で処理されていることもあり、量感や実在感の高いCGに仕上がっている。一方ビークルのアクションは、スピード感ある激しいアクションが特徴だ。

【森田】『リュウケンドー』からの流れに準じて、CGはできる限り“本当にそこに存在するもの”として作っています。合成している背景なども、実景をベースにしている場合が多いです。もの凄いドリフトみたいな動きはわざとやってますね。見せ方としては「ど派手」が基本路線なので(笑)。そこは意識していて──実際にファイアードラゴンみたいな超大型車両が停車するとき、あんなに派手なドリフトはしないだろうみたいのはあるんですけど、ドリフト煙を入れたりすることで、印象的になるよう、画面が地味にならないように、というのは心がけてます。

ドーザードラゴンのように、設定的に重量級のビークルはある程度は重量感や巨大感を演出する場合もあるが、それでも概ねどのビークルも、火炎魔人とのバトルではハイスピード撮影的なスローモーな動きではなく、激しくスピーディに動き回る。

【森田】巨大なビークルだから巨大感を優先してゆっくりと動かなきゃいけないとかそういった固定概念を一度外して、基本的にあまり制限を付けすぎないようにしてますね。その方が自由な発想もできるかなと思いますし。

こうした派手なアクションは、脚本段階からト書きとして書き込まれているわけではない。脚本の基本の一つに、アクション部分のト書きは必要最低限に留めるという考え方があり、そうしたアクション面をどのくらい面白く膨らませられるのか? は、各話の監督やアクション監督、VFXスーパーバイザーのある種、腕の見せ所でもあるのだ。

『レスキューファイアー』ごっこ?で打ち合わせ

CG関係のパートや合成が絡む実写アクションのパートでは、毎回、監督、アクション監督も交えて森田さんと脚本を元にコンテの打ち合わせが持たれる。
打ち合わせで出たアイデアをまとめる形でラフコンテを描き上げて、参加したスタッフがそれを確認。撮影現場では、クリンナップされたそのコンテをベースにして撮影が進行してゆく。

【森田】そのコンテを元にしてカメラマンさんが、「こういうアングルで撮りたい」みたいな感じで、更にアイデアを出したりして撮影が進んでいきます。

一方、CGパートについてはそのコンテを元にして、すぐに作業に入るわけではない。

【森田】ビークルのアクションシーンは、毎回「ガイド撮り」というのをして決め込んでいます。スタッフに説明するときに、仮編集したビデオを使うんですけど、その段階では当然CGは合成されていません。そこで説明するのに、何か具体的にあったほうが分かりやすいと言うことで。

ガイド撮りとは、森田さんや各話の監督など参加しているスタッフ総出で、実際に玩具を使ってバトルシーンを“演じる”というもの。また火炎魔人の役を監督自ら“怪演”したり(笑)、時には即興的にプロップもどきのようなものまで作られる。

【森田】例えば〈ファイアードラゴンが火炎魔人に突進しながら攻撃する〉というシークエンスが決まったとしたら、僕らスタッフが玩具を持って「ここでファイアードラゴンの攻撃!」「やられた!」みたいな感じで(笑)、完成映像と同じ動きを実際にやってるんです。

この、いい大人たちの繰り広げる“レスキューファイアーごっこ”映像(笑)は「子供の夢を壊してしまいそうなので(笑)」[森田]残念ながら門外不出ということなのだが、特別に見せてもらった18話や19話のガイド映像では、確かに完全に完成映像で見られるアクションやバトル、細かいディテールカットまでもが、スタッフによって見事に“熱演”されていた。

こうして作られたガイド映像を、本編の仮編集ビデオの当該部分にきちんと編集した素材を用いて、CGやVFXスタッフの打ち合せが行われる。

【森田】ニュアンスなどは、やっぱり人が動いた方が良く伝わるんですね。ですからコンテをベースにしてガイドを撮ります。

6話でバナナエンがサンバのような踊りをするカットがあるが、そのアイデア自体はアクション監督が撮影現場で「こんな踊りを踊らせたい」とやっていたパフォーマンスを、ほぼ忠実に再現したものだとか。またレスキューキングのキングエクスバッシャーのバンクシーンのガイドは、ファイアー1のスーツアクターが担当しており、ファイアー1Xと完全にシンクロした動きを実現している。
こうしたガイドの他に、時にはCGスタッフの「遊び心」も加わってCGの動きが決まっていく。

実景との合成シーン

「レスキュー」シリーズでは実際の風景ををベースにした合成カットが多く、またそれが効果的に使われてもいる。
それらの合成には、ムービーカメラで撮影した素材の他に、写真素材をベースに使うこともあるという。
・実景との合成シーン

「レスキュー」シリーズでは実景をベースにした合成カットが多く、またそれが効果的に使われてもいる。
実景ベースの合成にはいくつかのパターンがあり、1つはロケ現場で撮影したスチル写真を下絵(カラ舞台)にして、それにCGを描き足すものだ。
1話で燃えさかる街を爆走するバイクエンのカットや17話の俯瞰で薬を散布するスカイチームのシーンなどが、このパターンとなる。
ちなみに、スカイチームの活躍場面で登場する空撮風の街の俯瞰の下絵は、単純に高層ビルの上から撮影したものだそうだ。

実景の中にビークルなどのCGが現われ、そのCGの動きに合わせて役者が演技をするというシーンも多い。
7話で地下鉄構内に出現したドリルエンのシーンを例にとって、森田さんに合成プロセスを解説していただこう。

【森田】まず順番としてはムービーでガイドを撮るんですが、これは撮影現場で撮ります。 ドリルエンが構内を走ってくるシーンですが、ドリルエンの代わりに現場のスタッフが走ります。それに併せて、ちゃんとエキストラの人たちも逃げます。そして全体的な動きを確認して本番の撮影に入ります。その時は助監督さんが「ドリルエンが来た! はい、逃げて!」と叫んでエキストラの人たちが演技をした下絵の映像を撮ります。ガイドを参考に、下絵映像に合せてCGのドリルエンをこちらで合成していきます。

現場での実写合成でも「ガイド撮影」が重要な役割を果たしているのだ。
なお、撮影現場にはビークルなどの玩具が常備されており、現場でのガイド撮影には、必要に応じてそれも用いられているという。
当然、ビークルが格好良く映えるようなアングルやカットになることを念頭に置いて撮影されている。

3-D空間に造られた「特撮ステージ」

ビークルと火炎魔人の対決シーンでは、実景ベースの合成カットだけでなく、完全に3-DCGで組まれた「ステージセット」も使われている。

【森田】実景写真だけだとアングルが限られてしまうし、あまり高い位置からのアングルが使えないといった制約も出てしまいますがCG なら自由度が上がります。

3-Dで組まれたステージ。
上:「倉庫街」ステージ
中:「荒野」ステージ
下:「海辺」ステージ

1話の巨大バイクエンとファイアードラゴンとの戦いや11話のキャベツエンを追撃するスーパーファイアードラゴンのシーンなどで使われたのが「倉庫街」ステージ。
5話のカラスエンとの対決や13話のロボットエンとの戦いなどをはじめとして頻繁に登場する「荒野」ステージは、実際のロケ現場をモチーフにして組み上げられている。

【森田】実景とやりとりできるようにもなっています。カラスエン(5話)の時は、そのロケ現場の実景と「荒野」ステージを適宜使い分けてました。

9話でレスキューストライカーが大破する時や、21話のファイアードラゴンが火炎魔人と戦うシーンに使われたのが「海辺」ステージで、これは現実の浜辺では、ビークルと火炎魔人が戦うには狭すぎるという理由から造られたステージだ。
どちらの話でもロケ現場を使った実景ベースの合成カットも適宜使われており、「荒野」ステージ同様に、実景部分と3-Dステージとはかなりシームレスな形になるよう心がけられているのが分かる。

【森田】できるだけ実景で行けるところは行って、ここから自由にカメラを動かしたいということになると、3-Dステージに移行する感じですね。できるだけ背景が唐突に変わってしまうのは避けたいので、撮影場所も違和感が出にくい場所にしてもらっている場合もあります。

苦心する火炎のエフェクト

特撮の表現で難しいとされているものが、水と火だ。CGであっても、その事情に変わりはない。その意味に於いて、火災が題材となっている『レスキューファイアー』は、極めてチャレンジングな作品と言って良いだろう。

【森田】自然な感じに動かすのが難しいので、色々試行錯誤していって、実写の火をCGに置き換えたり混ぜたりしながら、さらに煙とかの要素も加えたりして、割と綿密に足し引きしながらできるだけリアルな火の表現になるようにしてます。

火災を越えた超火災が毎回発生する本作では、さまざまなパターンの炎に対応できるように、実際にさまざまな形の火の素材を撮影。
こうした素材を3-Dで作った炎にプラスアルファしているのだ。

VFXシーンでのこだわり

『レスキューファイアー』のCGやVFX制作のプロセスを色々と見てきたわけであるが、森田さんはどのようなこだわりを持って制作に臨んでいるのであろうか?

【森田】CGだけが目立つというのではなく、ドラマの一要素として馴染んだ形であるようにしたいと心がけています。

次回は森田さんのロングインタビューで、ビークルデザインやバンクシーンについて語っていただくぞ。

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